書評です。
「ラストライン」(堂場瞬一 著 文春文庫)
とても読みやすい警察小説です。
以下、ネタバレを含みます。
あらすじ
主人公はベテラン刑事、岩倉剛。
岩倉の50歳の誕生日の目前、管轄内で老人の殺人事件が起こる。
一見、簡単な事件と思いきや、新聞社や大企業との絡みが明らかとなり、、?
印象に残った点①:新聞記者をカギとした物語の拡張
この物語では2つ、事件が起こる。
1つは、老人の殺人事件。もう1つは、若手新聞記者の自殺。
岩倉は、この新聞記者が、「警察回り(サツまわり)」だったことが気になり、
記者の家族や同僚、学生時代の友人などに聞き込みを進める。
すると、老人と新聞記者の間の奇妙なつながりが明らかになり。。。
著者の堂場氏自身が新聞記者だったこともあり、新聞記者と警察官の絶妙な関係性がリアルに描かれていて、興味深かった。
印象に残った点②:新米刑事の成長ぶり
岩倉は本事件の捜査で、若手刑事の伊東彩香と組む。
充分な経験がある岩倉に対して、交番経験しかない伊東は聞き込みすらままならない段階。
事件の捜査と彼女の育成の両立に苦悩する岩倉の内面が丁寧に書かれているため、
「上司の気持ち」を伺える形式になっている。
その一方で、伊東の「余計なメモばかり取って、結局重要なポイントが抑えられない姿」など、
ついついやってしまう「新社会人あるある」は、警察官も同様なのだなと少し安心した。
ただ、そんな伊東も、岩倉から捜査の基本を学んでいき、作品後半では急成長を見せていく。
若手社会人が読むと、いつまでも若手ではいられないと、背筋が伸びる思いになるかもしれない。
まとめ
少しずつ話が拡張し、登場人物の数も多いが、比較的読みやすい。
新聞記者が絡んでいるのが一番の特徴。
新しいジャンルのミステリー小説を探している方にはオススメ。